2008年08月09日

二十一文字目「未」

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「“カツうどん”ていう名物メニューがあって、これが結構癖になるんですよぉ」と
何やら良からぬものを勧められた。
茹でたうどんの上に牛カツが乗っていて、そこに特製ソースがかかった代物だという。
うどんも牛カツも味の想像は出来る。これだけだとミスマッチのマッチ抜きだ。
しかしその特製ソースをかけることによって、どのようなハーモニーをかもし出すの
か気になり行くことにした。

こぢんまりとした洋食屋だった。
店に入って早速「カツうどん下さい」と注文した。
すると店のおばちゃんは「はい、カツうどん。ライスもね?」と当然のように聞き返
してきた。

え?うどんに、更にライス?意味が分からなかった。
が、ここは店の慣習に従うのが一番だと瞬時に判断し、「あぁ、そしたら、ライスも
お願いします」と店のおばちゃんに身を委ねることにした。
うどんにライス。これは焼きそば定食感覚で食べるものなのか?それならば・・・
待っている間、不安を打ち消すプラス材料を探そう探そうという思考回路になっていた。

そして待つこと5分。カツうどんとご対面。
少し深い目の洋皿に茹でただけのうどん、その上に何の変哲もないカツ、脇にキャベ
ツの千切り、そしてその上から少し黄色がかったデミグラスソースのようなもがかけ
られていた。恐らくこれが特製ソースだ。ライスにみそ汁も付いていた。
おばちゃんはカツうどんを出すなり、「ソースかけてね」とカウンターに置かれたウ
スターソースを手に取った。

え?特製ソースに、更にウスターソース?
僕はとっさに「ソースかけるんですか?」と聞き直してしまった。
するとおばちゃんは「うんうんうん。これはあくまでも好みやけど、最初何もかけん
と食べてみて、ちょっと味違うなぁ思たらソースかけて。まぁわたしはソースかける
けど」と暗に特製ソースの存在を批判してみせた。

まずは、ウスターソースをかけずに上のカツを特製ソースのみで味わってみた。
どことなく和菓子を食べているような感覚に襲われた。
次に、おばちゃんの指示通りウスターソースをかけてカツを頬張った。
直ぐにライスが欲しくなった。
おばちゃんの言う通りライスを頼んでよかった。
その後、うどんをひとすすりした。
これは最後にまとめて、目を瞑って食べようと思った。

結論。カツうどんとは、ライスとウスターソースが有って初めて何とか成立する、単
品ではまだまだ未完成の名物メニューだった。

食べ終わるとおばちゃんが「どやった」と訊いてきたので、少し迷ったあげく「僕も
おばちゃんと同じで、ソースかけた方が好みです」と当たり障りのない答えを見つけ
出し返した。すると別のおばちゃんが厨房から出てきて向かいのカウンターに腰掛け
「ウチの特製ソースはちょっと甘い目やねん」と特製ソースの特徴を補足してくれ
た。僕はハッとなり「あ、何かみたらし団子っぽかったです」と巧く味を表現してし
まった。厨房から出てきたそのおばちゃんは、それを聞いてこめかみに血管を浮き上
がらせながらも落ち着いた態度で「うんうんうん、初めて食べたこどもとかは、みん
なそう言うわ」と勝ったのか負けたのか分からない切り返しをしてきた。

店一杯に変な空気が流れ始めた。続けて「結局ぅ、ウチのソースはぁ、醤油とか入っ
ててぇ、和風やねん。醤油とかぁ・・・もう色んなもん入ってんねん。だから和風。
和風が特徴やねん」と余計に空気が悪くなる弁明を始めたので、僕は店を後にした。
僕は帰る道すがら、カツうどんにあと何を足すと更なる完成に近づくのか考えていた。

カツうどんには、まだまだ伸びしろがある。
posted by もりさわまさはる at 00:28| 大阪 ☁| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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