
洗濯物を取り入れたところで一服しようと、もう一度ベランダに出て
タバコに火をつけた。
すると、向かいの青空駐車場にしきりに辺りを気にする怪しげな中年
男性を発見。
その中年男性は、駐車場の一番はじっこに停めてある少し背の高めの
ワンボックスカーと、駐車場に隣接する民家の隙間に身を隠した。
車上荒らしかと思いきや、その中年男性は民家の壁に向かって立ち、
社会の窓を下ろし始めた。
只の立ちションである。
オッサンと目があった。
オッサンのファスナーを下ろす手が止まった。
ここは男同士。僕はすかさず見ない振りをしてあげた。がしかし目の
端でオッサンの動きを追っていた。
オッサンは別の場所を探そうかどうか悩んだが、結局40センチほど
横移動しただけで用を足し始めた。
一度タバコに火をつけると5分はかかる。
部屋の中は禁煙なので部屋には入れない。
たかだかオッサンのションベンの為に一旦火を消すのも癪な話だ。
しゃがんでベランダの陰に隠れたとて、煙が「まだここにいるよ」と
教えることになる。
何だか気まずい。
何だかオッサンと僕の二人だけの世界に居るようだ。
トイレで隣同士なら、何ら問題ない。
それはお互いがする立場。
この状況は、オッサンがしていて僕がただただ見守る立場。
僕もオッサンも身動きが出来ないまま、お互いの存在を感じ続けなけ
ればならない。
とんだプチ拷問を味わった。